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有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!

突然ですが、今月号より、めぐさんに代わり紹介を書かせていただきます、よろしくお願いしますm_ _m

今月号のキーワードは、「チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合」です。

会員の方は、それぞれの画像をクリックするとJ-STAGEを通じてすべて閲覧できます。

巻頭言:制約は創造を生む

今月号の巻頭言は、東北大学大学院薬学研究科 岩渕好治 教授による寄稿記事です。企業で研究をしていても、その大切さを感じる巻頭言でした。制約は、解決すべき課題とも換言でき、それが研究の種になると日々感じています。
オープンアクセスです、必読です!

パラジウム触媒のチェーンウォーキングを活用した選択的遠隔官能基化反応の開発

河内卓彌*

*慶應義塾大学理工学部化学科

有機合成化学の可能性を拡張する革新的な手法を紹介しています。著者は、パラジウム触媒を用いた「チェーンウォーキング」という現象を活用し、有機分子の遠隔位における選択的官能基化を実現しました。これにより、従来法では困難だった遠隔二官能基化が達成され、今後この概念が様々な反応で利用されることが期待されます。

カルコゲン結合で構造制御した軸性不斉ビアリール類の創製とロジウム二核錯体触媒への展開

村井琢哉、浜田翔平、小林祐輔、古田 巧*

*京都薬科大学創薬科学系薬化学分野

軸性不斉ビアリールの立体構造をカルコゲン結合で制御し、さらにそれをロジウム二核錯体触媒に応用した研究を紹介しています。分子設計から触媒機能までの詳細な解説により、これまで困難とされた立体選択的C–H挿入反応を可能にしました。カルコゲン結合という新たな化学的手法が広げる触媒科学の新たな可能性を示しています。

機能性分子合成を指向した電気化学的な炭素ヘテロ原子結合形成反応

光藤耕一*

*岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域

著者らが発展させた電気化学的に発生させたメディエータ(酸化種)を鍵とする、炭素ヘテロ原子結合形成反応によるヘテロアセン類の系統的な合成について、基質適用範囲と反応機構を詳しく解説しています。有機電解反応が有機合成化学における一般的なツールの一つとなることを感じさせる内容となっています。

構造修飾によるロタキサン型超分子メカノフォアへの新機能付与

野中慧悟、相良剛光*

*東京科学大学物質理工学院材料系

高分子材料中の応力可視化を目的として開発されたロタキサン型メカノフォアの設計と力学応答性の関係についてまとめられた論文です。メカノフォアの力学応答に要する力の大きさに関する議論にはじまり、設計されたロタキサン型メカノフォアがエラストマー中でいかに微小な力を検出できるのかについて詳しく解説されています。超分子をメカノクロミック材料へと応用した好例であり、機能性分子モチーフの材料化学への展開を検討中の研究者にはとても参考になる内容です。

配位重合における触媒活性種の対アニオンの設計を鍵とした精密重合反応の開発

田中 亮*

*広島大学大学院先進理工系科学研究科

有機合成に詳しい読者の皆様は、「オレフィン重合なんて、MAOをたくさん入れれば進むんでしょ?」と思っている方がほとんどだと思います。しかし実際は、MAOのような活性化剤の構造は、組み合わせる金属錯体の設計と同じくらい重要です。本稿ではオレフィン類の重合挙動を大きく変える活性化剤の開発に関する我々の研究を紹介します。

Review de Debut

今月号のReview de Debutは1件です。オープンアクセスです、ぜひ!

・Neutral Frustrated Radical Pairsによる分子変換反応(慶應義塾大学理工学部)前田文平

感動の瞬間 不斉触媒に魅せられて:キラルLewis酸からキラルBrønsted酸触媒へ

今月号の感動の瞬間は、東北大学大学院理学研究科化学専攻 寺田眞浩 教授による寄稿記事です。論文を読んだだけでは知ることができない研究の裏側や、寺田先生の心の中が見える、読んでいて「感動の瞬間」を体験できる素晴らしい寄稿でした。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズをご参照ください。

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大学教員→企業研究者。自分の知らない化学に触れ、学び、楽しみ続けたいです。

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